【その2】まんがの備忘録
――昭和元禄落語心中、再び。
以前紹介した、雲田はるこさんの『昭和元禄落語心中』。
レンタルで漫画を読んで、次にアニメを見て・・・、
結局、漫画全巻買ってしまいました(^^;
7巻・8巻に至ってはアニメDVD付きの特装版、10巻の描き下ろし小冊子も読みました。
いやぁ、もうこの漫画本当に大好きです。
作者が漫画を描くのが本当にすきなんだなぁ、というのがすごい伝わってくる漫画です。
今回も鬱陶しいくらいオススメします!w
まずはアニメですが、すごくよかったです!
作画も音楽も丁寧に作られているのはもちろんながら、読者を裏切らない声!
八雲師匠に至ってはこの声、話し方しか有り得ない!というくらいのハマり方。
漫画を読みながら想像していた八雲師匠そのままだったことに感動しました。
石田彰さんが八雲師匠、菊比古(若き日の八雲)どちらも演じていたのですが、
ちゃんと同一人物が歳をとったということが感じられる、演じ分けが本当に素晴らしかった・・・。
二代目助六を山寺宏一さん、与太郎を関智一さんが演じています。
どのキャラクターも噺家なので落語をするシーンがありますが、これも見どころのひとつ。
さすがはベテラン勢、落語シーンもきちんと様になっていて素晴らしかったです。
漫画は2回目読むと、1回目には気づかなかったことに気づいたり。
小冊子を読んだら、想像でしかなかったことが確信に変わってしまって、
しばらくショックでその事実を受け入れるのに時間がかかりました(^^;
そうすると、物語の見え方も少し変わってきて、さらに深みを帯びました。
キャラクターの心情をより理解することで、
1回目読んだときとは違うシーンにグッときたりもしました。
影はより濃くなり、また光はより明るく見えるようになったからか、
菊比古が八雲の名跡を継ぐシーンは胸に込み上げてくるものがありました。
「アタシの名は有楽亭八雲、本当の名などとうに忘れてしまいました・・・」
このシーン画もセリフも、本当に大切なものを何もかも失って得なければならなかったものに、
ただただ空虚さしかない心情が痛いほど伝わってきました。
そして結局、八雲師匠の本名だけは最後まで出てきませんでしたね。
八雲師匠は幼少から孤独な人生であったからこそ、
冷ややかな素振りとは裏腹に人一倍愛を求めて人を愛したかった人なのだと感じます。
歳を重ねてからは、老いていく肉体に対する不安や恐怖と闘いながらも、魅力的な人ゆえに、
家族同然の人達に愛され続け自らも愛し、生涯誠実に生きた人だなぁ、と生き様に感動します。
死んでも尚、あの世で助六やみよ吉から愛されていたことを知り、
長年背負ってきた負い目のようなものも手放すことができて、幸せな最期でした(;;)
生きていると当然、楽しいことばかりではなく、つらいと思うこともあります。
それは生まれたらいつかは死んでしまうのと同じように、誰にも等しくあること。
そして、人はなぜかそのつらいと思うことの方にフォーカスして不安になりがちです。
だけど、本当はつらいことも楽しいこともどちらも同じく存在しています。
“どっちもある”
そうわかっているだけで、おのずと楽しいことにもフォーカスできます。
八雲師匠も大切なものを何もかも失って、自分のすべてである落語にも未来を見出せず、
自分が死ぬとき何もこの世に残さぬよう、自分の落語も助六の落語もすべてあの世へ
葬り去ろうとしますが、結局はその後現れた与太郎に助六の面影を重ねて弟子にしてしまった。
いつまでも消えない自らの内に漂う絶望と、与太郎に見出してしまった光と、助六の娘・小夏。
そのすべてが存在し交わり合い、互いを認め合えたからこそ、
少しずつ足元の見えない暗闇から光の射す方へ全員が導かれ、
落語の未来が八雲師匠の思惑とは逆の思いもよらない方向へ進むことになります。
この漫画の魅力の一つとして、八雲師匠が艶っぽいことは大きな要素です。
他の女性漫画と違ってこうも魅力的な色気があるのはなんなんだ・・・、
と最初読んだとき思ったのですが、雲田はるこさんはBL漫画を描かれている方だったんです!
『昭和元禄落語心中』が一般作品の第一作目でした。
それで納得!少女漫画家が描く男性とはまた違う、魅力的な雰囲気を醸し出しているんです。
うまく説明できませんが、女性が好きな男性の色気みたいなもの?
これは読むとわかると思います!
残念なことに、10月からNHKで実写ドラマ化されます。イヤ過ぎます・・・。
本当に思うのですが、漫画のアニメ化や小説の実写化はまだいいとしても、
画のイメージがしっかりある漫画の実写化ってやる意味あるのか・・・。
演じる俳優のファンにしかメリットがないように思うのは私だけか。
ちなみに八雲師匠を演じるのは岡田将生さんです。うーん、私は間違いなく見ないです。
【追記:と思っていたけど、雲田さんがTwitterで岡田さんの演じる落語シーンが八雲師匠そのものだった、
と言われていたので少し見たくなってきましたw
それと、実写化のメリットは落語の普及に貢献することにもあるんだろうなぁ、
と思うと意味はあるなぁ、と思い改めました!】
でも、きっかけは実写ドラマであったとしても、
原作に勝る作品なし、ぜひ原作漫画を読んでいただきたいです・・・。
芸事って、技術も文化も何もかも伝聞で脈々と後世に伝えられているものばかりです。
作中にもそんなシーンが出てきますが、名人と呼ばれるその人こそが落語そのもので、
一人失えば一つの落語が消えてしまう。
ずっと残していきたいと思う残す側と残される側と、双方がいなければ残らない。
そう思うと、どの時代にも残したいと思う人達がいたというのはすごいことです。
実は落語ってちゃんと聞いたこともないし、寄席にも行ったことない。
一度ちゃんと聞いてみたいなぁ。
今回も頑張ってイラスト描いてみました(^^)
菊比古・助六・与太郎(なぜか八雲に破門されたときの与太郎w)です。
描くにあたって、じっくり漫画を見ながら描いたのですが、
雲田さん本当に絵がうまいです!
しかも手間を惜しまずすべてのコマ、ものすごく丁寧に描かれているなぁ・・・と
ひたすら感動しました(^^;
雲田はるこさんのインタビューを読むと、制作の裏側が少し知れてさらに面白くなります!
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